『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子/2018)

AIの進化が話題になるたびに「AIが人間の仕事を奪う」「AIに負けない力が必要だ」といった言葉をよく耳にします。本書は、そうした漠然とした議論に“知的な切れ味”を与える、まさに問題提起の書です。しかもその焦点は、AIよりも人間側の読解力の危機にあります。

■ 「AIの限界」が示したのは、人間の“本当の限界”だった

著者・新井紀子氏は、AIが大学入試問題をどこまで解けるかを試した「東ロボくん」プロジェクトの中心人物です。AIは東大には届かなくとも、MARCHレベルは余裕で突破する実力を持っていました。

しかし本書の核心はむしろ、AIと並行して行われた全国2万5000人の読解力調査です。
そこで明らかになったのは、日本の中高生の多くが

  • 短い文章なのに意味を取り違える
  • 「根拠のある判断」ができない
  • 文章の構造をつかめない
    という深刻な状況。

著者はこの現実を、単なる学力問題ではなく、社会の根幹を揺るがす危機として描いています。

■ なぜ読解力がそんなに大事なのか

AIが得意なのは大量のデータ処理やパターン認識。
逆に苦手なのは、「文脈理解」「常識判断」「意味の抽象化」といった人間的な思考です。

驚くべきことに、今回の調査で浮き彫りになった読解力の低下は、まさにAIが苦手とする領域と重なっています。
つまり、人間がAIに勝てるはずの“思考の武器”を自分たちで手放しつつある、ということです。

これは大学生にとって他人事ではありません。
レポート・卒論・プレゼン・企業の評価・研究の成果――
どれも読解力がなければ始まりません。

■ 本書は「AI時代を生きる私たち」への警告書

本書はAIの技術解説書ではなく、
教育・仕事・社会全体に広がる未来のリスクを、データと論理で示した“社会防災”の本です。

著者が示すメッセージは明確です。

AIが脅威なのではない。
「読める人」と「読めない人」に社会が二極化すること」が最大のリスクである。

学生にとって、この一文はかなり重い。
しかし、裏を返せば、今から読解力を鍛えれば未来の選択肢はいくらでも広がる、という希望でもあります。

■ 読後に「自分の読み方」を点検したくなる一冊

本書は、AIの未来本として読むだけではもったいない。
むしろ、

  • 自分は文章を「本当に」理解できているか
  • キーワードのつながりを追えているか
  • 論理を構造として掴めているか
    ――という、学ぶ上での根本を問い直すきっかけになります。

大学で伸びる学生は、まず読める力を取り戻す/強化するところから始めています。
その意味で本書は、大学生にとって“今読む理由”が非常に強い一冊です。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です