AIの進化が話題になるたびに「AIが人間の仕事を奪う」「AIに負けない力が必要だ」といった言葉をよく耳にします。本書は、そうした漠然とした議論に“知的な切れ味”を与える、まさに問題提起の書です。しかもその焦点は、AIよりも人間側の読解力の危機にあります。
■ 「AIの限界」が示したのは、人間の“本当の限界”だった
著者・新井紀子氏は、AIが大学入試問題をどこまで解けるかを試した「東ロボくん」プロジェクトの中心人物です。AIは東大には届かなくとも、MARCHレベルは余裕で突破する実力を持っていました。
しかし本書の核心はむしろ、AIと並行して行われた全国2万5000人の読解力調査です。
そこで明らかになったのは、日本の中高生の多くが
- 短い文章なのに意味を取り違える
- 「根拠のある判断」ができない
- 文章の構造をつかめない
という深刻な状況。
著者はこの現実を、単なる学力問題ではなく、社会の根幹を揺るがす危機として描いています。
■ なぜ読解力がそんなに大事なのか
AIが得意なのは大量のデータ処理やパターン認識。
逆に苦手なのは、「文脈理解」「常識判断」「意味の抽象化」といった人間的な思考です。
驚くべきことに、今回の調査で浮き彫りになった読解力の低下は、まさにAIが苦手とする領域と重なっています。
つまり、人間がAIに勝てるはずの“思考の武器”を自分たちで手放しつつある、ということです。
これは大学生にとって他人事ではありません。
レポート・卒論・プレゼン・企業の評価・研究の成果――
どれも読解力がなければ始まりません。
■ 本書は「AI時代を生きる私たち」への警告書
本書はAIの技術解説書ではなく、
教育・仕事・社会全体に広がる未来のリスクを、データと論理で示した“社会防災”の本です。
著者が示すメッセージは明確です。
AIが脅威なのではない。
「読める人」と「読めない人」に社会が二極化すること」が最大のリスクである。
学生にとって、この一文はかなり重い。
しかし、裏を返せば、今から読解力を鍛えれば未来の選択肢はいくらでも広がる、という希望でもあります。
■ 読後に「自分の読み方」を点検したくなる一冊
本書は、AIの未来本として読むだけではもったいない。
むしろ、
- 自分は文章を「本当に」理解できているか
- キーワードのつながりを追えているか
- 論理を構造として掴めているか
――という、学ぶ上での根本を問い直すきっかけになります。
大学で伸びる学生は、まず読める力を取り戻す/強化するところから始めています。
その意味で本書は、大学生にとって“今読む理由”が非常に強い一冊です。