- パラダイムシフト時代を生き抜くための「学び」とは?
- 4つのコアポリシー
- ① 多様な出発点は「知の多様性」
- ② まず型に入れ、そして型から出よ
- ③ 小さく安全に失敗できる学びのサイクル
- ④ 困ったところからが本当のお勉強
- 「自分をアップデートできる人」を育てる
パラダイムシフト時代を生き抜くための「学び」とは?

私たちはいま、気候変動の深刻化やAI技術の急速な浸透、加速度的に進む人口構造の変化、そして国際秩序の揺らぎが相互に作用する予測困難な「パラダイムシフトの時代」を生きています。どれか一つだけを取り出せば理解できる単純なものではなく、複雑で多層的な要因が絡み合っています。極端な気候や災害の頻発、グローバルとローカルが揺らぐ政治・経済の構造変化、AIによる価値観の更新、働き方の変容、コミュニティの再編。このように、私たちの日常の背後にある設定が書き換えられ続けているのが現在です。
こうした社会ではもはや、教科書的な「単一の正解」を探す姿勢だけでは通用しません。試合中にルールが変更される競技を戦い続けているようなものです。答えが一つに定まらない状況の中で、異なる背景・専門・価値観を持つ人々が関わり合い、折り合いをつけ、時にはぶつかり、協働しながら前進していく力が不可欠です。そのためには、知識以上に「状況を読み取り、判断し、行動する力」が求められます。そしてその力は、「どのように学び、どのように考え、どのように向き合うか」という姿勢によって育まれます。このような時代をしなやかに生き抜くために、本研究室は 4つの教育原則 を掲げています。
① 多様な出発点は「知の多様性」
学生は、一人ひとり異なる「出発点」を持って本研究室に足を踏み入れます。どの地域で育ち、どの高校で学び、どの家庭環境に置かれてきたか。進路選択にどんな経緯があり、どんな不安や期待を抱えて大学に入ってきたか。そして、どのような学びの癖を持ち、どんな得意・不得意があるのか。こうした違いは人格や能力の優劣を意味するものではなく、むしろ「知の多様性」を構成する重要な資源です。本研究室では、学生がこれまでに積み上げてきた経験を否定することは決してありません。それぞれが自然体で思考を深め、自分にあった学びを展開することを尊重します。
ある学生は発想が豊かでも、周囲の評価が気になって発言を控えるかもしれません。別の学生は、最後の一歩の粘りを出せずに踏ん張りきれないかもしれません。あるいは、自分ならできると薄々感じながらも、未知の領域に足を踏み入れることを無意識に避けてしまうことがあるかもしれません。こうした「個性」「癖」「学びの構え」は、どれも問題ではなく、出発点としての「事実」です。本研究室は、その事実を受け止め、学生が地に足をつけて学びを深められるよう、あらゆる背景を包含する環境づくりに力を注いでいます。
② まず型に入れ、そして型から出よ
これはかの世界的指揮者・小澤征爾を育てた音楽教育者・斎藤秀雄(1902-1974)の言葉です。まずは師匠の「型」に身を預ける段階が必要であり、基礎を完全に身につけたあとに、自分だけの創造的な表現を生み出せ、という意味です。歌舞伎の十八代目中村勘三郎も「型通りにできなければ型破りにはなれない。型がなければ、それは型なしだ」と述べ、いずれも「基礎の型」がすべての出発点であることを示しています。この「型」の考え方は、学問や研究でもまったく同じです。本当に自由に考え、独自の発想を形にしたいなら、まず正しい進め方や判断のお作法を身につける必要があります。
研究室に所属するメリットは、学術研究の「型」を最短で習得できる点にあります。本研究室では、JAXAで研鑽を積み、なおも国際水準の地球科学研究をリードする指導教員が、研究プロジェクトの組み立て方や思考方法、まとめる技術といった「とりあえずの勝ちパターンとその考え方」を伝授します。そのうえで、型を身につけた学生が自分の力で型を破り、新しい価値を生み出せるようサポートします。自由は、型を知ってはじめて本物になるのです。
③ 小さく安全に失敗できる学びのサイクル
大学での学びは「失敗から始まる学び」です。高校までの教育は、すでに正解のある問題に対して素早く正確に答える力が重視されてきました。しかし大学の学問は、「正解がない問い」に向き合う営みです。観測、解析、議論、発表——そのどれもが試行錯誤を含み、失敗は避けられません。本研究室では、失敗は減点対象ではなく「学びの入口」として捉えます。
- 失敗を許容する環境
- 改善のプロセスを共有する文化
- 小さな成功を確かに積み上げる経験
こうした循環が、「自分にもできる」という確かな自己効力感を育てます。これは外部評価に過剰に左右されず、自分の意思で学び、働き、生きていくための精神的な土台です。大学で学ぶ意味とは、正解を求めて急ぐのではなく、失敗と成功の往復を通じて、“自分の思考と選択を信じられるようになる”ことです。
④ 困ったところからが本当のお勉強
本研究室は、学生の成長のために全力でサポートします。しかし、過度に簡略化して与えたり、すぐに答えを提示したりすることはしません。なぜなら、学問とは「自ら咀嚼し、試行錯誤し、自分の言葉で再構成していく営み」だからです。研究の中では、複雑で腑に落ちない概念や、明確な答えを持たない問題に必ず出会います。本研究室は、そのわからなさを取り除こうとはしません。むしろ、わからないものに出会ったとき、それとどう向き合うかを学んでほしいと考えます。
未知の領域は、時に怖く感じられるかもしれません。しかし、その「わからなさの余白」にこそ、新しい発想や成長の契機が潜んでいます。学問の深さに触れ、世界の広がりを知ることは、そのまま自分自身の可能性を肯定することにつながります。
自分をアップデートできる人を育てる
あなたは、自分でも気づかないまま
“成長のブレーキ”を踏んでいませんか?
人は能力ではなく習慣によって無意識に自分の行動を制限してしまうことがあります。
- 周りの評価を気にして「やらない理由」を探してしまう癖
- まだ時間があるのに最後まで全力を出し切らない癖
- 知らない人との関わりをつい避けてしまう癖
こうしたものは、これまでの人生で心理的に「安全ではない」と感じたことから徐々に生まれてきた、自分を守るための自動ブレーキです。友達から「自信を持って」と口で言われても、このブレーキは勝手にかかります。では、どうすれば良いのでしょうか?
たとえばプロ野球選手に4〜6月生まれが多いのは、「その学年で1番背が高かったから」ではありません。幼少期の成長段階でごくわずかにリードしていたことで、大人から褒められやすく、そこで得た「自分ならできる」という自己効力感から、同じ能力を持つ子どもより積極的に活動し、その中でより上位の能力を伸ばしていくという「自己効力感のサイクル」が形成されたからだと考えられます。
本研究室は、この心理的安全性の確保を教育環境の中心に据え、挑戦を重ねながら「自分の可能性を誰よりも強く信じることのできる自立した人間」へと成長していく過程を作り出したいと考えています。研究とは目の前の「よくわからない現象」と向き合い、自ら問いを立て、試行錯誤を通して理解を深めていく営みであり、そのプロセスが成立するには、安心して行動できる土台が欠かせません。
- 「失敗しても笑われないこと」
- 「挑戦すれば歓迎されること」
- 「未知へ手を伸ばしたくなること」
本研究室ではこのような文化を意図的に設計・演出し、学生が安心して挑戦・成長できる場を整えます。